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NINJA
つい寂しくなる自分に、そう言い聞かせるような調子だった。ぼくはなるべく力強く頷いてあげる。彼女はもう笑っていた。まるで自分のことのように興奮して。きっと、ふたりが着々と「夢」に近づいていることがほんとうにうれしかったのだろう。望郷の念などあっさりと忘れてしまうくらいに。ぼくはそんな無垢な彼女の小さな頭をコツンと叩いた。

大してつき合いが長いわけでもないのに、幼馴染み気取りでわかった風なことを言う彼女に、ぼくはつい子どもみたいな悪態をついた。思えば、不安は見透かされていたのかもしれない。いつもぼくの一歩二歩先を行く彼女は、優しい声で子どもを諭すように云った。彼女のその言葉には、重みがあった。確かな重みが。ぼくは自分にもう一度喝を入れ直し、気を引き締めた。

その様子に納得した彼女は、それから未来のことを語り始めた。秋の新人大会のこと。冬の高校駅伝のこと。そして、そのずっとずっと先に見据えている、ふたりの「夢」のこと。ぼくはそれを、ただ聞いていた。いつものように生き生きと明日を語る彼女の笑顔が、ほんとうに眩しかった。そしてぼくはひたむきな彼女へ提案した。ぼくもまた、走らなくてはならない気になっていたから。
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